代表弁護士の川村です。

今回は、当事務所でも従来からよくご相談を受ける分野である「離婚」に関する内容です。

通常のケースでは、夫婦の別居後といえども、互いに同一市内や近隣の市・県に居住している場合も多く、いずれにしても近隣府県の家庭裁判所にて離婚や婚姻費用分担の調停等を行うことができ、実際上さほど困ることはありません。

ただ、場合によって、夫婦の一方が別居を機に遠方の実家に戻って生活していたり、夫が単身赴任中で別居状態のまま離婚の話を進めている場合など、夫と妻の住所が遠隔地、遠距離にある場合に、どの裁判所で離婚の手続ができるかで、実際上かかる費用も時間も大きく違ってくるということがあります。
今回はこのようなケースに関するお話です。

1 婚姻費用分担請求について

例えば、妻は子供とともに大阪に居住しており、夫が東京に居住している場合、特に、これまで妻が十分な婚姻費用の支払を受けられていないときに、婚姻費用分担の請求を遠隔地の裁判所で行わなければならないとすれば大変です。

この点、平成25年から施行された家事事件手続法では、調停事件の管轄については従来通り相手方の住所地を管轄する裁判所となっていますが(245条)、婚姻費用分担審判事件の管轄は夫または妻の住所地を管轄とする裁判所ということで、従来の管轄規定より拡大されています。

このような場合に婚姻費用分担請求を原則通り「調停」から始めると、夫の住所地たる東京家庭裁判所に出向かなければならず大変です。そこで、この場合、申立人である妻の住所地を管轄する大阪家庭裁判所において「審判」を申し立てるという方法があります。さらに、審判と同時に「審判前の保全処分」の申立てもしておきます。

最近では、婚姻費用は、特段の事情がない限り裁判実務にすでに浸透している「算定表」に則った金額が決定されるというルールが確立されています。生活自体が困窮しているなど緊急性がある場合は「保全の必要性」も認められると思いますので、速やかに保全決定を出してもらえる可能性があります。

保全決定がでれば保全執行も可能ですし任意の履行も十分期待できます。また、場合によっては保全処分の審理の中で裁判官の積極的働きかけ等により、早期に和解による解決もありえます。
まず生活費を確保して足元を固めてからじっくり離婚の話合いを進められればと思います。

2 離婚の調停について

離婚そのものについては審判ではなく調停を申し立てるしかありませんので、先の例では、妻側から離婚の調停を申し立てるには夫の住所地を管轄する東京家庭裁判所で手続するしかありません(妻の住所地を管轄する裁判所に対し自庁処理の上申書をつけて申し立てる方法もありますが、夫が明示的に反対すると厳しいと思われます)。

この場合に従来は、毎回の調停期日に代理人だけでなく本人も出頭するのが通例でしたが、そうなると往復の交通費だけでも相当多大な負担となります(通常は、弁護士に対し、各期日の出張日当も支払う必要があります)。

この点、平成25年施行の家事事件手続法では、家事審判・家事調停のいずれの手続についても、電話会議システム、テレビ会議システムを利用できるようになりました(54条・家事調停への準用258条)。

テレビ会議システムは、テレビ会議装置がある最寄りの裁判所に出頭して行うことになっています(まださほど普及はしてないと思われますが)。
電話会議システムは、本人確認等の必要性から、実務上代理人弁護士がついている事件に限定されていますが、本人が当該代理人の法律事務所に赴いて、法律事務所にある電話会議システム(スピーカーフォンで相互通話ができるシステム)を使って代理人も本人も会話に同時参加しながら手続を進めます。

個人的には、調停委員さんたちの「顔」(コミュニケーションにおける非言語的な要素)が見えない分意思疎通が難しいかなと思っていましたが、最近受任した事件で、第1回期日のみ東京家裁に出頭し、以後は電話会議システムで手続を進めてもらった事件がありました。一度きちんとお会いして突っ込んだお話をしておくと、思った以上にスムーズにコミュニケーションができましたので、本件のような場合非常に有用な方法かと思います。

3 「調停に代わる審判」の活用について

さて、上記の電話会議システムを用いて調停手続を進めてゆき、互いの合意が成立する可能性がでてきた場合に、離婚・離縁については、電話会議・テレビ会議システムによる手続では調停を成立させることができないことに留意する必要があります(268条3項)。

この場合、すでに調停条項案まで双方代理人で確定しているような場合において、単に形式的に最後の調停成立の場面でのみ、先の例でいえば、大阪に居住している妻が代理人と共に東京家庭裁判所まで出頭を求められるのも、妻にとっては仕事を休んだり子供を預けたりしなくてはならず、無駄な出費や負担を強いられるという感覚になりえます。

この場合、代理人のみ出頭して離婚を成立させることもできません(合意の内容が身分関係に関するものについては代理人による合意は許されないと解されています)。

そこで、このような場合に使える方法として、「調停に代わる審判」を裁判所に出してもらうという方法があり、活用が期待されます。すでに実質的に合意に至っている内容をそのまま裁判所に「調停に代わる審判」(284条1項)という形で出してもらうのです。
審判の送達後2週間以内に双方から異議の申立てがなければ(通常は実質的に合意しているため、異議を出すことは考えにくいです)、その内容で確定します。
あとは、調停離婚の場合と同様に、「審判離婚」として役所に届出をするなどしてゆくことになります。

当事務所では、従来より離婚等の家事事件についても豊富な取扱・解決実績があります。安心してご相談ください。