最近高齢者や障がい者の虐待防止について社会的関心が高まっています。
家族や親族など高齢者や障がい者の日常の世話をしている養護者による虐待も増加傾向にありますが、高齢者介護施設や障がい者福祉施設などの施設従事者による虐待も統計上年々増加傾向にあり、これを如何にして防止するかが喫緊の課題となっています。
高齢者虐待防止法や障害者虐待防止法が施行されてから相応の年月も経過し、法の趣旨もそれなりに周知され、通報や相談が増加したことによりこれまで認知されていなかったような事案も認知されるようになった面はあるかと思いますが、それを考慮に入れても格段の増加傾向にあると言ってよいかと思われます。

虐待をしてはならないということは、いわば3つの子どもでも理解できることなのに、なぜ虐待が無くならないのか、そこには人間の心の弱さや人間の心の底に潜む闇ともいうべき部分が垣間見えます。

しかし、虐待をその行為者個人の資質や倫理性の問題に止めてしまっては、問題の根本的な解決にはなりません。
ましてや、法律のルールや法律により課される罰則を従業員さんたちに抽象的に解説するだけで、この問題が解決するとも思えません。

ではどう考えるべきなのか。
私は、日常の厳しい業務に対峙している職員一人ひとりはともすれば道を失うこともありうるか弱い存在であることを互いに自覚しつつ、同じ職場で働く者同士が連携し、思いやりの心を持ち、互いに切磋琢磨し向上しながら、心を一つにして日々業務に邁進し、高齢者の介護、障害者の支援という施設の事業目的、理念を全うするために組織としてのベクトルを合わせてゆくことが、結局のところ、虐待を防止しうる唯一、最善の方法であると考えています。

大阪弁護士会では本年度も、昨年に引き続き「アウトリーチ事業」ということで弁護士による無料出張講座を行っており、その一つとして、大阪弁護士会高齢者・障害者総合支援センター「ひまわり」が「障がい者福祉施設従事者による障がい者虐待防止研修」として、大阪府下の障がい者福祉施設を対象に無料出張講座を行っています。昨年度は、高齢者の養介護施設従事者による虐待対応をテーマとした出張講座が行われましたが、それに引き続いての事業となります。

ということで、過日(2月2日)、ひまわりの委嘱を受け、上記出張講座の講師として、大阪府下にある障がい者福祉事業を行う事業所に赴き、事業所の従業員様向けに出張研修講義を行ってまいりました。

今回は25名程度の方が対象で、比較的少人数でしたので、一方通行の講義にとどまらず、実際に裁判となった事例に基づき、どの様な支援をすればよかったのかという観点から、4、5人のグループ複数に分かれていただいて、グループワークもしていただきました。
皆さん、非常に熱心に、主体的積極的に意見交換をしていただき、その結果について、グループの代表者の方から発表をしていただきました。
講師の想定以上に、バラエティに富んだ様々な意見が発表され、各人の知識や経験をもとに様々な観点から真摯に検討いただいた考え方を披露していただいたのでした。
そのことで、おぼろげながらも「あるべき支援の姿」がその場の、その空間における、「共通観念」として、そこはかとなく浮かび上がってきたようでした。

こちらの施設では、男性も女性も、若い人も比較的年配の方も、独身の方も家族を持たれている方も様々なバックグラウンドをお持ちの方がおられることと拝察し、そのような「多様性」こそが実は組織の「強み」なのだということをご指摘させていただきました。
多様な人々が互いに自らの経験や価値観を基に意見を発露し合い、その対話を通じて、より高次の次元に至ること、それが(「同」ではない)「和」というものの本質であり(「ドドド」では和音にならず、「ドミソ」だからこそ「和」音になるのと同じですね。)、そのような「和」こそが組織として大切にすべき価値観であると強調させていただきました。
その表情からは、出席者の多くの方に、こちらの趣旨とするところがご理解いただけたものと感じた次第です。

本無料出張研修の実施期間はまだあります。もしご興味のある方は、下記を参考にしていただいて、大阪弁護士会ひまわり宛お問い合わせいただければ幸いです。

http://www.osakaben.or.jp/info/2017/2017_0908_2.pdf