代表弁護士の川村です。年初からバタバタとしており、久しぶりのトピックス更新です。

2018年7月24日(火)の日経新聞の朝刊に、「ファストリの柳井氏 会計士は経営者と議論を 協会の講演で指摘」との記事が載っていました。
ファーストリテイリングの柳井正会長兼社長が、23日、日本公認会計士協会が開催した記念講演で、公認会計士に対して「経営者と経営課題を議論できるパートナーになってもらいたい」と語ったとのこと。
人工知能(AI)の発達などで会計業務が標準化される可能性について言及したうえで、公認会計士が「(監査業務で)ハンコを押す人になっている」と指摘し、AIの発達などで「単純な計算や分析は必要がなくなる」との見通しを示したうえで、経営者との協調を呼びかけたということです。(以上、日経新聞の記事を要約して引用)

柳井氏は直接には公認会計士業界に対し語っておられますが、言われていることは我々弁護士にも同様に当てはまるものと思います。
AIが今後発達してくれば、単なる判例や学説のリサーチ等であればAIが簡単に成し遂げてしまう日はそう遠くない未来にやってくるでしょう。

弁護士がクライアントに提供できるサービスあるいは「商品」を、単に「(法律の)知識」であると(狭く)捉えてしまうと、そのような弁護士はAIに取って代わられ淘汰されてしまうでしょう。
当HP冒頭ご挨拶にも書かせていただいているように、弁護士がクライアントに提供できる真の価値は、単なる「知識」のみでなく、法の専門家としての「見識」に基づく適確な「判断」を提供することであると常日頃から私自身は考えています。

現代社会を取り巻く状況は、「VUCA」(ブーカ)という4文字で表されると言われています。VUCA(ブーカ)とは、Volatility(変動性・不安定さ)、Uncertainty(不確実性・不確定さ)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性・不明確さ)という4つの英単語の頭文字から取った造語であり、現代の経営環境や個人のキャリアを取り巻く状況を表現するキーワードとして使用されています。
そのような不安定で不確実で曖昧で複雑な環境の下では、「自由な発想」ないし「発想の転換」が必要であり、柔軟な思考力と判断力が求められます。
そして、ときに経営者は孤独であると言われます。
経営者は、「海図のない広大な海を航海する探求者(explorer)」であると表現されることがあります。
自ら経営する企業の経営課題について、最終的に判断する権限と責任を有していますが、最終的な決断を下す、まさにそのとき、経営者は孤独です。その孤独に打ち克つ勇気が必要であり、気高い志と、確固たる信念や哲学が求められています。

私は、弁護士としてこれまで中小企業のクライアントに対する法務支援に力を入れてきていますが、このような経営者の「孤独」を理解し、冒頭述べたような柳井氏が指摘された「経営者と経営課題を議論できるパートナー」たる存在になることを目指しています。まだまだ満足できるレベルではないと思いますが、日々研鑽は怠らないように心がけています。

ところで、この話題に関連しますが、経済産業省は本年4月に「国際競争力強化に向けた日本企業の法務機能の在り方研究会報告書」を発表しています。
http://www.meti.go.jp/press/2018/04/20180418002/20180418002.html
この報告書は、タイトルにあるように「企業の法務部門」の機能の在り方を研究したものであり、直接的には「弁護士」の業務の在り方に対する提言ではないのですが、企業法務に関わる弁護士にとって極めて示唆的な内容となっています。

その要諦(エッセンス)は次のとおりです。
現在、企業が直面するリーガルリスクが多様化・複雑化しており、法的課題に対する企業のマネジメントの発想の転換(法務機能の有効活用)が必要であること、そして、このような現代の環境において、求められる法務機能とは何かといえば、「法令その他社会的規範の下で、事業活動が、適法かつ適切に行われ、企業が健全かつ持続的に成長するよう、法的支援を行うこと」であり、また、法務関連業務は、社会・経済情勢が大きく変化する中で、従来からの業務(ex.契約審査、法律相談、訴訟対応)は拡大傾向にあるとされています。

そしてあるべき法務機能は次の2つの視点から説明されます。

■企業のガーディアンとしての機能
企業価値を守る観点から、法的リスク管理のために経営や他部門の意思決定に関与して、事業や業務執行の内容に変更を加え、場合によっては意思決定を中止・延期させるなどによって、会社の権利や財産、評判などを守る機能。

■ビジネスのパートナーとしての機能
企業価値を最大化する観点から、法的支援を経営や他部門に提供することによって、会社の事業や業務執行を適正、円滑、戦略的かつ効率的に実施できるようにする機能。

以上を要するに、企業が健全かつ持続的な成長を実現するための法的支援を担う法務部門は企業価値の向上のためのビジネスの「ナビゲーター」役であるとされています。

これが弁護士の在り方にも同様に当てはまるとするならば、これからの時代は、企業の法務を支援する弁護士(顧問弁護士)は、経営者と経営課題を共有し、会社の事業や業務執行を適正、円滑、戦略的かつ効率的に実施できるようにするという機能を積極的に果たすべきなのであり、分かりやすく言えば、企業経営における「守り」の機能のみならず、「攻め」の機能が必要なものとして求められているということです。
これまでの時代、とかく弁護士は、何か紛争があったり、裁判になったときに、やむなく依頼する存在、経営には直接関わりない存在と認識されがちでした。これからの時代、経営者には、企業経営にあたり、顧問弁護士のリーガルサービスをより戦略的に活用してゆくという「発想の転換」が求められているといえますし、そのような弁護士が求められる時代になってきています。

そして、当事務所では、そのような弁護士を求められている中小企業経営者の「パートナー」たらんと欲し、今後も日々研鑽と努力を続けて参ります。