2020年4月1日、債権法(民法の一部)が大きく変わりました。そして、それに伴い、契約書を改訂する必要があります。今回は、身元保証契約について説明します。
皆様の会社において、入社時に、従業員が将来、会社に対して与えた損害を担保することを約し、実際に従業員が会社に損害を与えた場合、それを保証する身元保証人を求めていることもあるかと思います。
改正民法では、現在だけでなく将来発生する債務について包括的に保証する根保証契約に関して責任を負う限度額(極度額)を定めなければならないと規定されました。この規定は、個人の保証人が予期しない額の保証を強いられることを防ぎ、その保護をはかるために定められたものです。そして、極度額の定めがない場合には保証契約自体が無効となるとされました。
身元保証契約は、「身元保証ニ関スル法律」の適用を受け、その法律において極度額に関する規定はないものの、その法律に定めがない部分については民法の規定が適用されますので、当然に極度額の定めが必要となります。
では、極度額はどのように定めるとよいのでしょうか。極度額は具体的に定める必要があります。そこで、極度額については、300万円とか500万円といった明確な金額を記載する必要があります。
次に、その極度額をどの程度の金額とすることが妥当なのでしょうか。基準としては雇い入れ時の給与額を基準とするとわかりやすいと思います。複数の社員を比較すると、雇い入れ時の給与額は業務の責任の重さに比例し、責任が重い社員の方が会社に対して損害を与えた場合の賠償額が大きくなると推測されます。とすると、雇い入れ時の給与額を基準にその6か月分とか1年分とかいった金額に一律に決めておくと良い思います。
そして、どの程度の期間分の給与相当額が妥当かという点ですが、従業員が故意に会社に損害を与え、その損害が多大となる場合もあることを考えると、できるだけ長期間分の給与相当額を極度額として定めることも考えられます。しかし、身元保証契約が、会社に迷惑を掛けないことを約束させるという道徳的な意味を有すること、第三者に保証を求めるものであるということ、あまり高額な保証を求めると保証人が躊躇し身元保証契約を締結しにくいことを考慮すると、雇い入れ時の給与の1年分程度が妥当と考えられます。
なお、どの程度の期間分の給与相当額を極度額として定めるのが妥当かという点については、その職種、取り扱う業務などによっても異なってきますので、是非、弁護士にご相談いただければと思います。