昨今、過労死の問題が紙面を賑わすことが多くなっています。

先日も、2011年に26歳で亡くなった堺市の市立中学校の教諭について、地方公務員災害補償基金公務災害(労災)による死亡と認定したとの報道がありました。

そこで、従業員の死亡が過労死と認められるのはどのような場合なのか、過労死と認められると使用者はいかなる責任を負うことになるのかをまとめてみました。

独立行政法人労働政策研究・研修機構の過労死認定基準によると、1か月間におおむね100時間を超える時間外労働が認められる場合、あるいは、2か月以上にわたって1か月あたりおおむね80時間を超える時間外労働が認められる場合には過労死のリスクが高まるとされており、その条件を満たした場合には、過労死による死亡として労災認定がなされる可能性が高まります。

前述の教諭については、死亡直前3か月の校内での時間外労働は月61~71時間だったようで、前述した過労死認定基準を下回る数値でしたが、残された授業や部活の資料などからすると、「(一人暮らしの)自宅でも相当量の残業をこなしていた」とされ、死亡直前の3か月間に1か月あたりおおむね80時間を超える時間外労働がなされていたとして、過労による死亡として労災認定がなされました。

そして、従業員が過労により死亡したと認定された場合には、労働災害補償保険法により、国から従業員に対して、給付金が支払われます。

この給付金は雇用保険に加入していれば支払われるものですが、雇用保険に加入し、給付金さえ支払われれば、使用者は、従業員に対して、他に賠償責任を負わないと考えている方もおられるかもしれません。

しかし、給付金が支払われることにより使用者が責任を免れるわけではありません。裁判で、従業員の死亡が過労死によるものであると認められ、それについて使用者に責任があるということになれば、使用者は、亡くなられた従業員に発生した損害額から労災保険による給付をうけた金額を控除した残額を遺族に賠償として支払う必要があります(給付項目によっては控除されないものもあります。)。

労働災害補償保険法に基づく給付金は、従業員若しくはその遺族に対する最低限の補償ですので、使用者が負担する賠償金は1億円をこえることもあります。

そこで、使用者としては、従業員の労働時間を管理し、時間外労働が過労死認定基準に該当しないようにしなければなりません。そして、前述の事例のように時間外労働は自宅での労働時間も加味されることがありますので、実際の業務量を把握し、自宅で時間外労働が行われていないかどうかにも注意しなければなりません。また、労災が発生してしまった時のために任意の保険に加入するなどの対策を行うのも良いと思います。

なお、過労死認定基準に該当しない、又は保険加入により会社はリスクを負わないということであれば、それで良いというわけではないのは当然です。従業員が健康的に仕事をできる職場環境を作ることこそが、従業員の能力を引き出すことに繋がり、事業の発展にも資することだと思いますので、労働時間管理としては過労死認定基準を意識しつつ、個々の従業員の健康状態の把握にも努めていただければと思います。